三振目

最初の出会いは
地元近くの骨董屋でだった。


2X万円と値札の付いたその刀は
二尺四寸五分で樋がなく反りが浅いもの。
自分が探していた刀の姿だった。
何度か振らせてもらったり、眺めたり。


軽い気持ちで店に入っただけに、
自分好みの刀が安く売りにでていることに戸惑ってしまった。
連れて帰りたくてしばし葛藤。
しかし家庭の事情ですぐ動かせる金額ではなく、、。


後ろ髪を引かれつつも
「今回は諦めよう、二年もすれば余裕ができるさ」
と自分に言い聞かせお店を後にした。



それから一週間後。


とあるイベントのお手伝いのために
地元の神社に出入りしていたら、
近辺に住む研師の方が槍を奉納したという。


地元に刀の研師がいたことに驚いて、
機会があれば引き会わせて欲しいとお願いしたところ、
宮司さんの計らいですぐにお会いすることができた。


七十歳近辺だろうと思われるお爺さん、N村先生。
厳しい顔付きに日焼けした肌。
今も鍛えているのか、シャツの下の筋肉が盛り上がっていた。
笑った顔は優しげだ。
聞けば元警察官。今でも剣道、試斬と稽古されているそうな。
武家美術鑑賞会も主催されているとのこと。


刀の勉強がしたい旨を申し出たところ、
時間のある時に遊びに来いと言ってもらえた。


「このあと暇か?なんならスグ来いっちゃ」


さすが村上人、時間は無駄にしない(笑。


車に揺られてN村先生宅へ。
研ぎ場やお持ちの刀を見させていただいた。
刀を研ぐところは初めて見たので色々と興味深く、
たくさん質問してしまったけれど、嫌な顔せず教えてもらえた。


ふと部屋の片隅に目をやると、
見覚えのある刀があるような?あれ?これは、、。


手にとってよく眺める。
やっぱりあの刀だ。 こんなところで再開するとは、、。


「ああ、これか。これはワシが納めたんだけど、
 売れなくて戻ってきたんよ。
 欲しいなら1X万でいいぞ。金はあるとき持ってこい。」


えー!?
いきなり半額になってしまったよ(^_^;。


しかも会ったばかりの自分を信用してくれて、
ある時払いで良いという。
嬉しくて言葉に詰まってしまった。


ありがたく使わせて頂きます。
大事にします。


喜びと興奮に包まれての帰り道。
この夜はなかなか寝付けませんでした。


人との縁、刀との縁に感謝。

二尺四寸五分
無銘

柄が少し短いのでなんとかしたいところ。
N村先生に教えてもらって自作してみようかな?



木曜日稽古


●剣術
○飛竜剣